特集 許容できる放射線量


東日本大震災から一年三ヶ月、いまだに被災地では数多くの津波の爪痕が残され、また被災された方々は大変な生活を強いられています。

先日の、群馬県桐生市の庭山由紀市議のツイッターでの問題発言は、あたかも桐生市が「放射能汚染地域」であるかのような誤解を与えました。ツイッターのフォローを見ると、市議の除名処分動議について「事実を言っただけなのに」「真実の隠蔽」といった声が聞かれます。

庭山市議は、地元桐生市による岩手県宮古市のがれきの処理に反対して、妨害行動にも打って出ました。北九州市では、がれきの受け入れをめぐって一悶着がありました。

はたして、がれきはどの程度、汚染されているのでしょうか? 調べてみました。

がれき 放射線量 震災




庭山市議のブログ『由紀日記』では、「岩手県宮古市長への手紙」がそのまま掲載されています。それによると、市議の主張はこのようになります。

このまま廃棄物処理法違法の、放射性物質を含むがれき焼却を実施すれば、ただでさえ、「放射能汚染状況重点調査地域」に指定されている本市は、福島県並の汚染地になることは避けられず、強い怒りを覚えます。

ここで注意していただきたいのは、「放射能汚染状況重点調査地域」とは、原発事故後に放射能の拡散状況を調べるために指定されたもので、それが即「放射能汚染地域」を意味するものではない、ということです。

では、実際に宮古市のがれきはどの程度汚染されていて、またそれは安全なのか危険なのか、検証してみましょう。

震災から一ヶ月後に、ギズモード・ジャパンの記事で、シーベルトを軸にした放射線量の目安が掲載されていました。以下をご覧ください。

放射線 ネタ
ソース:gizmodo.jp


少し見えづらくて恐縮ですが、左の目盛りは上から下まで、0.1マイクロシーベルトから10000ミリシーベルトを指しています。(1ミリシーベルトは1000マイクロシーベルト)

ちょっと懐かしいCRTモニタを1年間使った場合に受ける量は1.0マイクロシーベルトで、事故を起こした福島の原発周辺で一日を過ごすと浴びる量が3.5マイクロシーベルト。歯のレントゲン検査が5マイクロシーベルトです。

ギズモード・ジャパンが引用した記事の図のオリジナルは、informationisbeautiful.netによる図です。

これによると、福島原発から250km離れた東京で、事故から107日後の2011年6月28日に観測された一日あたりの値が7.5マイクロシーベルト。ちなみに、人が一日に浴びる自然放射線量は、場所や個人の環境にも左右されますが、平均して10マイクロシーベルトです。

さて、肝心のがれきの放射線量はどのくらいなのでしょうか。先日の読売新聞の記事では、「岩手県宮古市のがれき約2・3トン」を「中之条町の吾妻東部衛生センター」が受け入れたと報じられています。記事によると、こうです。

吾妻東部衛生センターの独自基準(毎時0・23マイクロ・シーベルト)より低い同0・028~0・032マイクロ・シーベルト

搬入前の同センターの放射線量(同0・042マイクロ・シーベルト)よりも低く、「問題なし」と判断

なんと、がれきから検出された放射線量は、センターで元から観測されていた放射線量よりも低い値でした。

この結果だけでも、がれきを被災地から搬入したところで、「福島県並の汚染地」になるとは到底考えられません。

ところで、がれきを焼却処理した場合、大気中に拡散される放射能はどのくらいになるのでしょうか。環境省のFAQでは、「がれきを燃やすときに、セシウムなどの放射性物質が大気中に出てしまうのでは?」という問いに対して、次のように回答しています。

セシウムについて、バグフィルター付きの焼却炉で99.92~99.99%、電気集じん機付きの焼却炉で96.65~99.62%の除去率を確認しています

焼却によってセシウムが煙に含まれたとしても、フィルターでほとんどが除去されるということですね。

環境省のリーフレットでは、以下のように説明されています。

広域処理の対象となるのは、岩手県と宮城県のがれきで、放射性セシウムの濃度が不検出、もしくは低く、受入側で安全に処理できるものに限ります。岩手県と宮城県の沿岸部は福島第一原発から100km~250km以上離れており、空間放射線量は他の地域とほぼ同等です。

可燃物の場合、焼却して焼却灰に放射性セシウムが濃縮されても8,000Bq/kgを下回るよう基準を設定しています。これは法律で定められた基準値で、8,000Bq/kg以下であれば、放射能汚染のない一般ゴミと同様に埋立処分ができます。この値はIAEA(国際原子力機関)も認めているもので、埋立終了後に周辺の住民が受ける放射線量は、日本人が受けている自然の放射線量の1/100より少なく、影響は無視できるレベルです。

もちろん、放射能を心配するあまり、極度に懐疑的になってしまった人は、環境省のデータや見解も信用しないかもしれません。しかし一方で、献血車が寄付を募った桐生市の住人の血液や、宮古市からのがれきに、安全値を越える放射能が検出されたというデータもありません。

東日本太平洋側の津波で発生した大量のがれきは、いまだにたくさん残されていて、復興の妨げになっています。もし、計測事実に基づかない、根拠のない主張によって、がれき処理が妨げられるとするなら、それは被災地に対しての差別にしかならないのではないでしょうか。

6月16日追記

環境省のリーフレットでは、埋め立ての基準を、IAEA(国際原子力機関)も認めている8,000Bq/kg以下と記していますが、桐生市のある群馬県が、がれき処理について岩手県と結んだ協定に関する記事では、以下のように報じています。

焼却前のがれきに含まれる放射性セシウム濃度の目安を、国が1キロ・グラムあたり240~480ベクレル以下としているのに対し、協定は受け入れの要件を同100ベクレル以下と厳格化した。

このようにベクレル単位でも厳しく制限しているのに加えて、シーベルト単位で検出された値はきわめて低いものです。がれきの焼却処理で放射能が拡散する心配はまずない、と考えていいのではないでしょうか。

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